仕事中の交通事故、労災による後遺障害認定について解説

後遺障害認定

ある日突然…

ある日、交差点で直進していた原付の右側に交差点を左折進行した普通乗用自動車の左側が衝突するという事故が発生しました。被害者はアルバイトからの帰り道のこの事故に遭い、地上1メートルの高さまで飛ばされ、顔面や体に傷害を負いました。その後、顔面けいれんなどの後遺障害が残ったことから後遺障害等級1級の後遺障害認定を受けました。

今回ご紹介する事案は、不運にも仕事中に交通事故に遭い、後遺障害が残った場合の労災による後遺障害認定についてご紹介します。

「労災による後遺障害の認定はどのようにして行われているのか。」、「普通の後遺障害の認定とはどのように違うのか。」、「慰謝料は支払われるのか。」などの不安なお気持ちや疑問を一挙に解決します。以下で、労災による後遺障害認定の流れや申請方法、支払いまでの一連の手続きについて弁護士が詳しく解説します。

労災とは?

まず初めに、前提として「労働災害(労災)」とは何かをご説明します。

労働災害とは、正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態にかかわらず労働者が業務中や通勤途中に事故や災害などによって、負傷や、疾病にかかったり、障害が残ったり、死亡したりした場合をいいます。

ここでのポイントは、「労働者」が、「業務中または通勤途中」に「負傷、疾病、障害、死亡」した場合にあてはまることが重要です。

そのため上記事例のアルバイト帰りに起きた事故も、労働者であるアルバイト従業員が、通勤途中で負傷したことから労災にあたります。

しかし、業務中に事故に遭ったとしても、事業主に資力がなければ十分な補償をしてくれるとは限りません。そうすると、被害に遭った労働者は全くの補償がなされないという事態に陥ります。

そこで、被害に遭った労働者に十分な補償を行うという目的で制定されたのが労働災害補償保険法です。この法律によって労働者は事業主に補償を求めるのではなく、労災申請をし、国から補償を受けることができます。

この労働災害補償保険法は、「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的」としています(同法1条)。

後遺障害認定までの流れ

後遺障害とは

まず、後遺障害とは、労災によって負傷や疾病を負い、その後これらの負傷等が治ったときに、障害が残った場合をいいます。ここにいう「治ったとき」とは、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなったときをいいます(厚生労働省障害(補償)給付請求手続きより)。そのため、「傷病の症状が投薬・理学療法等の治癒により一時的な回復がみられるにすぎない場合など症状が残存している場合であっても、医療効果が期待できないと判断される場合には、労災保険では、症状固定として療養(補償)給付を支給しないこととなっています。そして、後遺障害が障害等級に該当すると認定されたときは、障害(補償)給付が支給されることになります。

後遺障害の認定

では、後遺障害の認定がどのようにして行われているのかの大まかな流れを解説すると以下のとおりになります。

  1. まずは、所轄の労働基準監督署(長あて)に障害(補償)給付支給請求書を提出します。
  2. 所轄の労働基準監督署に必要書類が提出されると、労働基準監督署において後遺障害の等級の認定審査が行われます。
  3. 労働基準監督署での後遺障害の審査が完了し、等級が認定された場合には厚生労働省から支給決定通知が送付されます。

大まかな流れではありますが、このような手続きを経て後遺障害の等級が認定されます。

後遺障害認定の内容

後遺障害にはさまざまな等級があります。その等級によって支給される金額が異なってきます。等級の認定においては医師が後遺障害の判断を行い、原則として被害者が直接医師との面談が行われます。

この面談では、被害者が被害状況や症状を直接医師に伝えることができ、内容が伝わりやすいため後遺障害の高い等級が認定されやすいという傾向があります。そのため、被害に遭った時のことや現状を思い出し、お話しすることが苦しいこともあるとは思いますが、今後の等級の認定に関わるので、医師との面談をお願いします。

よくある質問

Question1.労災による後遺障害認定と自賠責の後遺障害認定は違うのか?

同じ交通事故の後遺障害であっても、労災の場合は後遺障害を認定するところが異なります。労災でない場合の後遺障害については、自賠責による後遺障害の認定が行われます。

Question2.労災による後遺障害認定では損害賠償はもらえないのか?

まず、法的に損害とはさまざまな種類があります。損害はまず財産的損害と非財産的損害に大きく二分され、財産的損害はさらに積極的損害と消極的損害に分けられます。

非財産的損害というのは精神的損害を指し、いわゆる慰謝料にあたります。そして、財産的損害のうちの積極的損害とは、物の修理費や怪我の治療費、入院費、弁護士費用などをいいます。消極的損害は、将来の所得や営業収入、物の転売利益、物の賃料などいわゆる逸失利益をいいます。

労災において後遺障害の等級が認定されると、障害(補償)給付及び、障害特別金、障害特別支給金が給付されますが、慰謝料は支給されません。これは、災害補償が財産的損害を補てんするために給付されるものであるところ、慰謝料は精神的損害であり、災害補償によって保護されるものではないからです。

したがって、労災による後遺障害認定では、後遺障害慰謝料や逸失利益等の損害賠償は給付されません。そのため、労災による補償とは別に損害賠償を加害者の自賠責保険や任意保険に請求する必要があります。

Question3.労災の後遺障害の場合、いつまでに申請する必要があるのか?

労災保険では、障害補償給付などを受ける権利は症状が固定したとき、すなわち症状の回復の見込みが無くなった日から5年を経過したときに時効によって消滅することになります(労働者災害補償保険法42条)。そのため、症状が固定したときから5年以内に申請をしなければならないという制限がありますのでご注意ください。

これに対して自賠責保険では、自動車損害賠償保証法19条によって給付等をうける権利が3年以内に時効によって消滅すると規定されているので、申請も同様に症状が固定したときから3年以内に行う必要があります。

Question4.労災とは別に自賠責保険や任意保険・加害者本人に対する慰謝料などの損害賠償請求には期限があるのでしょうか。

答えとしては、あります。不法行為による損害賠償の請求は被害者が損害及び加害者を知った時から3年以内に時効によって消滅します(民法724条)。そのため、損害賠償請求もまた3年以内に行う必要があります。3年を過ぎると損害賠償請求は出来なくなります。

Question3.でご説明した労災保険の後遺障害認定の時効と期間(症状が固定したときから5年以内)が違うので注意する必要があります。

最後に

以上、ご説明したとおり労災は自賠責や任意保険とは異なる点が多くありました。特に、労災による後遺障害認定だけでは損害賠償を請求出来ませんのでご注意ください。損害賠償を請求するには、別途保険会社に請求する必要があります。この場合は普通の交通事故よりも手続きが複雑になります。

不安な方は一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。皆様の不安なお気持ちや疑問を一挙に解決致します。