交通事故の過失割合を決める修正要素とは?

ながら運転

交通事故の示談交渉では、明らかに加害者側の過失が原因で事故が起こったような場合でも、被害者側に過失が全くないと判断されることはごく稀です。

それは車対車の事故に限らず、車とバイクまたは自転車、車と歩行者、自転車同士、自転車と歩行者など、あらゆる交通事故に当てはまります。

交通事故の結果に対する過失責任の割合は機械的に決められるものではなく、事故の態様や当事者の状態などによって様々な修正が加えられるのです。

そのため、自身の過失割合が増え受け取る損害賠償金が減額されて納得がいかないということもあるでしょう。ここでは、交通事故の過失割合とその修正要素について詳しくご説明します。

交通事故の過失割合

―過失割合とは―

交通事故の過失割合とは、交通事故の原因となった当事者の過失責任を分担する割合のことです。

交通事故のほとんどのケースでは、どちらか一方がすべての責任を負うということにはなりません。例えば、歩行者が急に道路に飛び出した、赤信号でバイクが交差点を通過したなど、被害者となった側の方にも責任が問われる場合があります。

被害者にも何らかの落ち度が認められる場合、加害者8:被害者2のように加害者と被害者の過失の度合いによって割合を決めることになります。この割合が過失割合です。

加害者の過失が大きいとしても被害者にも落ち度があったのだからその分は加害者の責任から差し引きますよ、ということです。この過失相殺という考え方に沿って過失割合が決まり、それが損害賠償額に反映されるのです。

―過失割合の決定基準―

交通事故のほとんどのケースでは、事故当時者双方が示談交渉によって話し合い過失割合を決めることになります。この過失割合を算定する際の根拠となる基準があります。

  • 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準<全訂5版>
    (東京地裁民事交通訴訟研究会編、別冊判例タイムズ第38号)
  • 民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(2018年版)通称:赤い本
    ([公財]日弁連交通事故相談センター東京支部編)
  • 交通事故損害額算定基準(26訂版)通称:青本
    ([公財]日弁連交通事故相談センター編)

これら3つの基準をもとに過失の基本割合は決定します。これらは過去の裁判例などを参考にして事故や過失を類型化し、過失割合の判断が迅速に行えるように作成されたものです。

したがって、保険会社が下す過失割合の判断の根拠となっているだけでなく、示談が決裂し裁判になった時にも裁判所の判断基準となります。

―過失割合の決め方―

示談交渉において相手方の保険会社は過失割合を提示してきます。しかし、そもそも過失割合を決めるのは保険会社ではありません。示談交渉の双方の話し合いの中で決められるものです。

ただ、保険会社は賠償額を極力低く抑えたいわけですから、たとえ加害者本人が100%自分の責任だと言ってもそれをそのまま採用することはありません。

したがって、保険会社の提示する過失割合はあくまでも相手方の言い分だと認識しておきましょう。そして、納得できない場合には弁護士に相談して専門的な判断を仰ぐことが必要です。

過失割合の修正要素

―過失割合の修正要素とは―

交通事故の各類型にはそれぞれ特有の修正要素があります。この修正要素とは、交通事故での過失割合を調整するための加算要素と減算要素のことです。もともとの過失割合に修正要素を用いることによって、その割合は5~20%加減されます。

―加算要素―

対車両事故の場合の歩行者や自転車運転者のように、もともとの過失が小さいと考えられる(被害者であることが多い)側に過失があったと判断され過失割合に加算される要素です。

  • 夜間…日没後は歩行者等が見えにくいが車はライトで認識されやすい
  • 幹線道路…交通量が多く幅員が広い国道や県道などでは歩行者側に課される注意義務は大きい。
  • 横断禁止場所…道交法に反する場所で横断すること
  • 直前直後横断…車の直前や直後を横断したり飛び出したりすること
  • 立ち止まりや後退、ふらつき…運転者の予測が不可能な歩行

―減算要素―

歩行者など被害者とされる側の過失から減算される要素です。相手方である運転者など、加害者側の過失として認められるものです。

  • 幼児・児童・老人…判断能力が低く俊敏な行動も期待できない者を保護するという見地から歩行者や自転車運転者だった場合に過失が5~10%ほど減算される。自動車運転者には適用されない
  • 集団横断…多人数で歩行している場合は発見しやすい
  • 著しい過失…※1参照
  • 重過失など…※2参照

これらの要素が加減され過失が相殺された結果、加害者と被害者のどちらにどのくらいの責任があったのかを算定し過失割合が決まるのです。

修正要素の著しい過失とは

通常の事故で想定されるものを超えた運転者の過失のことです。道交法に違反する行為として認められると、著しい過失として5~15%程度の過失割合が加算されます。

<著しい過失の例>※1

  • 脇見運転などの著しい前方不注視 [道交法70条]
  • 酒気帯び運転[道交法65条1項]
  • 一般道路でおよそ時速15キロ以上30キロ未満の速度違反[道交法125条]
    (ただし高速道路を除く)
  • ハンドルまたはブレーキの著しい操作ミス[道交法70条]
  • 携帯電話で画面を見て通話し運転する行為 [道交法71条5号の5]

修正要素の重過失とは

過失が重大で故意に匹敵するような深刻な運転者の過失のことです。重過失が認められると20%程度の過失割合が加算されます。

<重過失の例>※2

  • 居眠り運転
  • 無免許運転[道交法117条の2の2第1号]
  • 酒酔い運転[道交法65条1項、道交法117条の2第1号]
  • 過労、病気及び薬物の影響などにより正常な運転ができないおそれがある場合[道交法66条]
  • おおむね時速30キロ以上の速度違反 (ただし高速道路を除く)
  • 嫌がらせ運転などの故意に準ずる加害行為

過失相殺の裁判例

<人対車の事故の裁判例>
【大阪地裁平成13年5月31日判決 交民34巻3号721頁】

歩道と車道の区別がある交通頻繁な車道上において夜9時過ぎ被害者が酩酊状態で歩いていたところ、車道を走行してきた原動機付自転車と衝突した事故事案です。「夜間に歩車道の区別がある交通量の多い車道を酩酊状態で歩行したこと」は被害者の落ち度であると過失が認められ30%の過失相殺がなされました。

 <車対車の事故>
【大阪地裁平成12年6月2日判決 交民33巻3号942頁】

交通整理の行われていない交差点で、赤点滅信号側のXは交差点手前で一旦停止しその後交差点に進入。黄点滅信号側のYは交差道路の車両動静に全く注意を払うことなく加速しながら交差点に進入し生じた衝突事故です。この裁判では、X:Yの過失割合は40:60との判決が下されました。

本裁判例はあくまでも目安ですが、徐行するという本来の注意義務を怠ったYの過失割合が加算されることは明らかでしょう。自動車は信号機の表示に従わなければなりません(道路交通法7条)から、信号に違反した自動車の過失は重くなります。

信号機のある交差点での直進車同士の出合い頭の事故では、ともに違反した場合は50:50です。しかし、Aが青信号でBが赤の場合の過失割合はA0:B100となり、信号無視をした側に100%の過失が認められるケースがあります。また、Aが黄信号だった場合にはA20:B80と修正されます。

このように、事故を招いた原因に対する責任を修正要素によって調整していくことが過失相殺です。

特異性のある修正要素

―バイクの場合―

対四輪車のバイク事故の場合、二輪のバイクの方が受ける衝撃が強くけがも重症化しやすいことから深刻な傷害を負う危険性が高いと考えられています。そのため、四輪車と比べ単車側の過失は10%~20%程度下方修正されます。これは単車修正と言われる修正要素です。

例えば<バイクと四輪車双方直進の交差点事故>では、バイク側が青信号であればバイクの過失割合は0となります。また、バイク黄:四輪車青でも10:90、バイク赤:四輪車黄で70:30です。双方の信号が赤の場合には40:60ですから、四輪車同士に比べてバイクの過失が減算されていることがわかります。

ただし、状況によっては修正要素が加算される場合もあります。特に単車事故に多いのが

ヘルメットの不装着や禁止されている車体での二人乗りです。

ヘルメットの不装着によって頭部外傷などの重症になった場合、一般道では著しい過失、高速道では重過失と認定されます。このようなケースで、ヘルメットを不装着だった単車側の過失割合が10%増加したという裁判例もあります。

―自転車の場合―

  • わき見運転
  • スピードの出しすぎ
  • ブレーキなどの制御機能の整備不良
  • 二人乗り
  • 傘差し運転
  • 携帯電話の使用
  • ヘッドホンの使用
  • ベルの不装着
  • 無灯火運転など。

これらは「著しい過失」に該当し、10~30%程度の修正要素となります。

また、両手を放して自転車を運転していた場合は重過失と判断され、さらに過失割合が加算されることになります。

まとめ

過失割合は交通事故の損害賠償額等を決める重要な判断です。しかし、過失割合の判定は個別具体的な事故の状況に応じて行なわれるため、修正要素による過失相殺は一律ではなく分かりづらいものです。前述した「別冊判例タイムズ第38号」には典型的な交通事故が図解されていますので、ご覧になってご自身の事故と比べ理解を深めることも大切でしょう。

過失割合における修正要素はもともと、当事者の公平性を担保するためのものです。しかし、保険会社が提示する過失割合がご自身の納得のいくものではない場合には公正さを欠くことになりかねません。適正な過失割合を導くには、専門的な知識と経験が豊富な弁護士に相談し的確なアドバイスをもらいましょう。お気軽にご相談ください。

参考資料 別冊判例タイムズ第38号